文化を失いつつある木材の世界

 日本の木造住宅は、かつてはそれぞれの地域に応じた樹種や部材が使われ木材も地域と共に歩んできた。

 しかし近年では阪神大震災の柱材における集成材利用の増大、2000年に施行された住宅品質確保法による部材の性能重視によって、木材は価格と性能のみが市場で競われることになった。そこではかつての文化は失われつつある。

 日本の木材の多くがこのような状況に追い込まれている。そこでは、市場を中心とする経済性の下で、育林、伐出、加工、流通を通した生産性の向上と大量供給体勢の構築に向かわざるをえない。

 そのために、従来の助成制度の発想を転換し、生産性向上にインセンティブを与えることによって生み出される利益を、山元へ還元する方策を確立せざるをえない。その上で、間伐の促進と再造林放棄防止のための公的支援制度を再検討する必要がある。

 また、違法伐採材の輸入防止と、輸送などに伴う二酸化炭素排出の抑制に資する仕組みを確立するなど、環境問題への明確な対応が改めて求められる。

木の話

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